人が太る原因その1

人が太る原因その1

人はなぜ太るのか

 

人はなぜ太るのでしょうか。

 

太るというのは、どういうことなのでしょうか。

 

その理屈は、ある意味ではとてもシンプルです。

 

食物をとると、消化器官の働きが正常であれば、エネルギーをもつ三大栄養素(炭水化物〈糖質〉、タンパク質、脂質)の約95%は吸収されます。

 

消化管の吸収能力をおさえて摂取量を実質的に減少させる薬や機能性食品もありますが、その効能はそれほど大きなものではありません。

 

したがって、太ってしまったということは、体内に摂取されたエネルギーの量が、体内で消費されたエネルギーの量より多くなった結果なのです。

 

 

肥満=摂取エネルギー>消費子不ルギー

 

 

摂取エネルギーと消費エネルギーの量が同じであれば体重は変わりませんが、摂取量が消費量を上まわった状態が続けば、余ったエネルギー(体脂肪)は脂肪細胞に蓄えられて肥満に向かっていきます。

 

脂肪が脂肪細胞だけでなく肝臓や筋肉に蓄えられることもあり、健康にとって弊害になっています。

 

人間の身体は、とりすぎたものを何もしないでゼロにすることはできませんから、消費しないとひたすらため込み、それが肥満につながるのです。

 

大食いであったり、高カロリーの食物が大好きな人のほうが摂取エネルギーの過剰を起こしやすいのはたしかですが、それだけで肥満につながるとは必ずしもいい切れません。

 

肥満は、食事の量が多いとか少ないとか、食物のカロリーが高いとか低いとかにかかわらず、摂取エネルギーが消費エネルギーを上まわっているかどうかで決まるのです。

 

かりに、毎日2000キロカロリーを摂取している人が1600キロカロリーしか消費していなかったら、400キロカロリーのエネルギーが余ってしまいます。

 

余ってしまった400キロカロリーにあたる脂肪の重さはだいたい44グラムなのですが、脂肪細胞には約20%の水分が含まれているので、体重は約53グラム増えてしまうことになります。

 

もし、毎日400キロカロリーのエネルギーオーバーが1ヶ月続くと、約1.6キロの体重増加につながります。

 

問題は、消費エネルギーの減少にある

 

世界の国々では今、先進国に限らず食料不足の国を除いた発展途上国においても、肥満の増加が大きな問題になっています。

 

日本でも、昭和51年から平成18年までの30年間に、特に男性は約2倍に増加しています。

 

にもかかわらず、成人の1日の平均摂取量は約2000キロカロリーで、以前と比べてむしろ減り気味なので、現代の肥満増加の最大の原因は、食べすぎによる摂取エネルギーの増加というよりも、運動不足による消費エネルギーの減少であると考えられています。

 

この現象は、他の先進諸国や一部の発展途上国でも同じ傾向にあります。

 

消費エネルギーは、生命を維持するために不可欠な基礎代謝エネルギー(空腹時、安静状態で生命活動を維持するのに必要な最小のエネルギー)、身体を動かすときに消費する活動代謝エネルギー、そして熱産生エネルギーの三つのエネルギーに分けることができます。

 

熱産生エネルギーには主に、食事誘導性熱産生(食物を消化吸収するときに発生する熱エネルギー)と、低温曝露下熱産生(低温下で体温36度をキープするために発生する熱エネルギー)などが挙げられます。

 

消費エネルギーの約70%が基礎代謝エネルギー、約20%が活動代謝エネルギー、残りの約10%が熱産生エネルギーという割合ですが、運動不足が続くと活動代謝だけでなく基礎代謝も減少してしまいます。

 

基礎代謝は消費エネルギーの約70%を占めているだけに、基礎代謝の減少は消費エネルギーの減少を招いてしまうことになってしまい、運動不足の生活を続けていては、少し食べすぎたとしても身体は脂肪をためやすい状態になってしまうのです。

 

交通手段の発達などによって、あまり身体を動かさなくても生活できてしまう現代社会。

 

私たちは、食物が豊かで運動不足になりがちな、太りやすい環境下に暮らしているのです。

 

否定できない遺伝の関与

 

両親が肥満でない場合は、子どもが肥満になる可能性は約10%なのに対して、両親のどちらかが肥満の場合は約50%、両親とも肥満の場合は約80%にもなるといわれています。

 

最近は、これらの理由として、両親と同じ生活習慣が影響している他、食欲をおさえる遺伝子や、消費エネルギーをおさえる遺伝子など、分子生物学の発達によって肥満に関係する遺伝子が多く見つかり、肥満に遺伝が関与していることは否定できなくなりました。

 

人間における肥満の遺伝には、遺伝子を構成する構造がまったく異なるために起こる単一遺伝子異常によるものと、遺伝子が集簇(群がり集まっていること)している染色体異常、遺伝子を構成する塩基やつくられたタンパクのアミノ酸の配列が1ヶ所だけ異なるために起こる単一遺伝子多型(SNPs)によるものなどがあります。

 

単一遺伝子異常のもので臨床的に注目書れているのは、摂食の減少と消費エネルギーの増加に関係するレプチンという物質をつくり出すob
(obese 過度に肥満の)遺伝子です。

 

ob遺伝子は、肥満の原因遺伝子として、最初にマウスで、その後に人間でも見つかりました。しかし、ob遺伝子異常による肥満は、世界的にも数家系にしか見つかっていない稀なものです。

 

一方、単一遺伝子多型によるものは発症頻度が高く、中でも熱産生エネルギーに働くβ3アドレナリン受容体遺伝子異常は、日本人の場合、イヌイット(極北ないし亜極北地帯に住むモンゴロイド系の民族)、ピマインディアン(アメリカーアリソナ州の居住区に住む民族)に次いで多く有し、肥満の増加に影響しています。